東大卒博士元大学院大学教授の弁理士

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特許出願

特許出願件数が減っているのは先進国では日本だけ

日本では、特許出願件数が減少し続けています。最盛期には42万件くらいあったのですが、リーマンショックや東日本大震災などの影響もあり、出願数は今では年間28万件程度まで減少しています。

これに対して、中国、米国、韓国等は特許出願件数が増えています。リーマンショックの起きた国である米国でも特許出願件数は増えています。経済的に破綻しそうな韓国でも特許出願件数は伸びています。

それなのに、日本では出願件数が減っています。ただ、PCT出願件数で見るとまだいいです。さらに、各国での特許取得数でいえば、トップ10に日本は何社も入っています。

これらを考え合わせると、日本企業は、特許の数ではなく、質で勝負するようになったということでしょう。

国内特許出願の件数を増やすのではなく、出願件数を絞り、その分を海外展開に回しているように見えます。

高度成長期は、欧米の基本特許に対して、日本企業はその利用特許を埋め尽くして、相手が身動きできないようにしてクロスライセンスに持ち込むようなことをやっていました。

しかし、今では欧米技術をそのまま使って安く作って輸出する、というモデルができなくなったので、日本独自の技術で勝負せざるをえなくなり、日本でも海外特許を使わなくても作れる技術を開発しているだめ、数を出す必要がなくなった、とも考えられます。

かつては、企業によっては、年間の出願ノルマが3件とか決められていて、あまり意味のない出願もあったようです。

今は特許予算もリーマンショックでカットされ、それでも何とかなることがわかり、出願件数が減ったのもあるでしょう。リーマンショックのときは、研究費が7割程度に減らされ、それに連動して特許予算も7割に減らされた会社もあったようです。予算が減らされても、それまでに出願しているものの維持は必要ですから、新規出願数が半分になったという企業もあったようです。

特許予算の問題で日本全体の特許出願件数が減ったのは、日本の将来にとってあまりいいことではないと思います。研究費も7割に削られたら、必要な装置や試薬も7割しか購入できないので、発明数が減るのも当然の流れでしょう。

さらに、最近のコロナウイルスの影響で、在宅勤務が多くなり、会社の研究所に出勤できない期間が長い企業もあるようです。

すると、今後は特許出願件数がさらに減少するおそれがあります。

しかし、日本経済が再度復活するためには、特許になるような優れた技術開発をするしかないように思います。よそと同じ製品を安く作る、という世界の工場は、円高になったためにできなくなっています。だとすれば、差別化した製品を作り、世界で販売するしか日本経済を復活させる方法はないでしょう。アニメなどの著作物を輸出してはいますが、それだけでは十分ではありません。

日本の技術者、研究者が、十分能力を発揮して素晴らしい特許をたくさん出せるようになって欲しいです。

 

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